【ナタリー読んだ】客観的な文章でも熱量は伝わる

「きっと興味あると思うよ」

そう言われて手渡されたのは、『ナタリーってこうなってたのか』(大山卓也 著)。週末に読みました。 この本はちょうど先日の株式会社ナターシャがKDDIに買収されたことで非常に話題になりましたね。

本を読んで印象に残ったのは「ちゃんとすること」「Webの編集権」について。これは他のメディアやブログ等でさんざん語り尽くされているので、今回は触れないでいいかなと思います。

コミックナタリー編集長・唐木元インタビュー|唐木元|cakes(ケイクス)

ですので、今回は「正しく伝えること」について。

編集方針は事実だけを書くこと 

まず、ナタリーの編集方針として「書き手の思いはどうでもいい」と著書で述べられています。つまり記者は感想や批評などの自己主張はせず、事実を書く。ナタリーはこれをスタンスとしているようです。

こういった編集方針の狙いは以下の2点。

  • だれが書いても同じクオリティの記事を生産
  • 記事が、会話やブログやSNS上でのネタになるように

ただし、こういった文章は面白みに欠ける、他媒体と差別化できないという見方もあると思います。それでもこの編集方針を貫くのは、正しい文章だからこそ読み手に伝わるものがあるからだと言います。

こう言ってしまうと、ナタリーの記事は無味乾燥なつまらない文章なのではないかと思う人もいるかもしれない。しかし淡々とした乾いたテキストの間から、エモーショナルな感動が立ち上がってくることがある。そのステージ上で起こっていること自体がすでに感動的だから、それを丁寧に文字にしていくことで、読み手もその感動を追体験できるのだ。そこで、”書き手の思い”という名のフィルターを乗せてその形を歪めてしまうのは、ナタリーがやるべき仕事ではないと思っている。

上記で述べられているエモーショナルな記事について、やっぱり気になりますね。p159の津田大介さんと唐木元さんの対談形式で話している章で紹介されていました。必読です。

歓声と奇声が飛び交った!メインステージで『双恋』イベント開催 - 電撃オンライン

ナタリーの記事ではありませんが、電撃オンラインの担当編集をしていた当時の大山卓也さんがOKを出した声優の堀江由衣さんのライブレポート。これを読んでみれば、ナタリーの原点だと言えるとわかると思います。「いらない文字列は全トル」と語る津田さん唐木さんのお二方は以下のように話しています。でも……

津田 臨場感伝わるよなあ。

唐木 それにこれ、一見キモオタをおちょくっているんだけど、実は誰の機嫌も損ねない。堀江さんは自分が愛されていることがわかるし、全文読めばファンたちのリアクションの機嫌みたいなものが細かく書かれているからオタクたちも嬉しい。メディアとしては、みんなが見て笑ってくれればPVになる。だれも傷付けないで面白いことをやるっていう。

 これが”ほっちゃんホアー”というバズワードとしてネットの鉄板ネタになっているそうです。無理に面白く文章を書こうとしたり、読み手を煽ったり、あるいは現実に見て、聞いたものを水増ししたりしない。むしろ、見て聞いたものを正しく言葉にしようとすることが、結果的に読み手に伝わる文章になるのだと思います。

もちろん、感想や批評をしない点に関してはメディアの方向性によるでしょう。

客観的な文章でも熱量は伝わる

結局、今回話してきたことはすべて「ちゃんとすること」に紐付いていました。主観の入らない文章=客観的な文章でも熱量を伴って伝えていくことができるのです。これは書き手も読み手も同様です。

「書き手の思いはどうでもいい」(ありのままでいいのよ)というナタリーのスタイルは、面白い文章イメージを一つぶち壊してくれました。

 たしかに、ほんとうに可愛い女の子は化粧しないほうが可愛い!と胸が熱くなるときがしばしばありました。

 

ナタリーってこうなってたのか (YOUR BOOKS 02)

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