編集はWebなのか。いま紙から学ぶべきこと
インターネット全盛期、そしてWebメディア続々と立ち上がる昨今では、紙の出版業界からWebメディアを運営するスタートアップやベンチャー企業に力を発揮する場を変えるかどうか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。 最近だと、東洋経済オンライン編集長の佐々木さんや、講談社の佐渡島さん、そしてダイヤモンド社の加藤貞昭さんなどの編集者がベンチャー企業に移籍したり、自ら起業してりしています。
彼らが注目されているのは、「紙」で培った経験をWebの業界にうまく適応させながら持ち込んでいるから。これがWebでは新しいのです。これは言いかえれば、いま出版業界で働いている人はWebの場でも活躍できる可能性が多いにあるということです。
さて、そこで気になるのがWebと紙の違いについてです。以下に自分の考えの要点だけを図にしてみました。
見ていただくとわかるように、Webの特性は2点あります。
『Web』
- 結果が見えやすい
- 拡散性が高い
- 基本的にタダ→拡散性
右上に位置するのがWebのメディアです。
『紙』
- 伝えたいことに集中できる
- 読者には、おおよそ文脈が共有されている→没頭性
- 雑誌や本を購入するため、離脱しにくい→没頭性
そして左下に位置するのが紙の雑誌や本などのメディアです。
Webメディアは拡散性とPVなどの結果が見えやすい点から、運営はイケイケどんどんの雰囲気になりやすい傾向があるでしょう。良い意味では新しい試みに挑戦しやすいです。一方で、結果ばかりを求めて本当に伝えたいことをなにかをないがしろにしてしまう側面を持っているのかもしれません。
紙から学べること
それでは紙のメディアの経験のある人達から、私たちが学ぶべきことはどういうものなのでしょうか? それは文章の質への強いこだわりや読者に本当に伝えたいことを考える姿勢、思考法、そして行間や文字のフォント、階段といった、編集に注力していたところでしょう。
それらはすべて「読みやすい」に繋がり、私たちは時間を忘れて読みふけってしまうような「没頭」へと進歩していくのだと思います。
さいごに
ぜひ紙のメディアからWeb業界に来たいと思う人には挑戦してほしいです。いまはテクノロジーの力の恩恵で、まるで映画のように没頭してしまう記事をWebで発信できるのです。
一方で、もし自分が「これからはWebだ」と言って出版業界は古い、紙の慣習は取り入れたくない……というような視野の狭さを感じたならば、意識的に紙の媒体を読むだけでも学ぶことがあるはずです。そればかりか、あなたの周囲に出版業界で経験がある人がいたとするなら、非常に幸運だと思います。
盗むくらいの気持ちで。
さいごは、narumiさんのブログの引用で締めます。
自分は紙の仕事には一切携わったことがないが、20代の頃にお世話になった上司が紙出身だったことは大変幸運だった。
多くの先輩も紙の仕事を経ていた。 よく同年代のネット編集者と話すのは「上司が紙のノウハウとプライドをしっかり持っていて、かつ自分の主戦場はネットというのは非常にいい環境だった」ということだ。
やっぱり紙をやってきた人の言葉は重いというのはあった。2000年代はそれを浴びていて、いまの土台になった。
たぶん、そこに接ぎ木しようとしている。
今後ネットメディアで働き始めようとなったら、そうもいかないだろう。それはちょっと不幸かもしれないし、だけれども、もしかしたら新しい価値観を作り出すのに良い方向に作用するかもしれない。 なんて勝手に思っている。
適当が信条のネット編集者が「ナタリーってこうなってたのか」を読んでみて : Blog @narumi
おっしゃるとおりだと思っています。