『テンプリズム』を読了。大切な人に優しくなろう!という気持ちを思い起こさせてくれる作品でした

少年マンガは好きですか? 男の子なら、幼い頃には世界を守るヒーローになりたいと思ったことがあるでしょう。『ドラゴンクエスト』や『交響曲エウレカセブン』のような、主人公が冒険するにつれて、強くたくましく成長していく物語です。

そんなよくある熱いストーリーものは、もう飽きたよ!という野次が聞こえてきそうです。

じじつ、ぼくは野次らないまでも飽きつつありました。けれども『テンプリズム』を読んだら、久しぶりに心に響いてくるものがあったんです。

要するに、日常を大切に、人に優しくなりたいと思いました。

『テンプリズム』の著者は『め組の大吾』や『シャカリキ!』の生みの親である曽田正人さんです。物語をざっくり言うと、一国の王である主人公のツナシが、国を守るために戦っていくストーリーです。

ツナシの剣の先生「ユイ」の行動に、考えさせられる

注目すべきところは、ツナシの剣の先生として登場する「ユイ」の行動!これが本当にかっこいい。王であることに背を向けていた、一国の王子であるツナシ。ツナシがその現実に向き合うことになるきっかけを、ユイはつくります。その上、じわじわと考えさせられるような、胸に刺さるものなのです。詳しい話については本作品を読んでみてほしい。
※すこしネタばれしてしまうかも。。

ぼくが”本作品で考えさせられたこと”とは、「だれかの心を動かすためには、伝えたい相手に、心からの、ありったけの夢や希望、想いを託す。そのためには自分の命を投げ捨ててでも、誰かのためになりたい。あるいは救いたい、守りたいと思ったことがあるだろうか」と。そういう気持ちを思い起こさせてくれました。

思い返してみれば、幼い頃から読んでいた『ダイの大冒険』でも、アバン師匠は、弟子たちを守るために死にました。『ワンピース』でも、主人公のルフィを守るために、実兄である火拳のエースは赤犬サカズキとの間にはいり、死にました。

これはミスチルの『HERO』的に言ってしまえば、

「ダメな映画を盛り上げるために、命が簡単に捨てられていく。違う、僕らが見ていたいのは希望に満ちた光だ。」

という意見もあるかもしれません。

しかし、いずれにせよ想像するきっかけを与えてくれました。剣の先生ユイや、主人公ツナシと同じように、「大切な人のために身体を投げ出せるのか」。

ぼくは考えました。
できるかなあ。……たぶん、できなさそうだなあと。

「たとえば誰かの一人の命と引き換えに世界を救えるとして、ぼくは誰かが名乗りでるのを待っているだけの男だ。愛すべきたくさんの人たちが、ぼくを臆病者に変えてしまったんだ。」

自分の過大評価なのか、あるいは前向きな精神のおかげか、ミスチルの櫻井さんが代弁してくれたと思えます。

さいごに

それでもただ一つだけ、この作品を読んで、辿り着いた感想は一つ。

家族を、友人を、いま改めて大切にしようということ。たわいない会話を、数年後に振り返ったときに笑えるように。そういう気持ちを思い出させてくれる作品でした。

それはそうと、女の子も楽しめる作品ですよ。『美少女戦士セーラームーン』を見て育ったなら、『ふたりはプリキュア』をはじめとするプリキュアシリーズを毎朝欠かさず見て過ごしてきたなら、可愛くて強い女性になりたい!と、胸の奥にそういう気持ちを持っていますよね。

ひたむきに自らの現実、あるいは運命と向き合うツナシは本当にかっこいい! 

読めばきっと、応援したくなるはずです。

 

漫画家 曽田正人 公式サイト

テンプリズム 1 (ビッグコミックス)

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