集積化が価値を生むなら、地域の中でつながりを生む役割が重要になる。徳島県神山町に行ってきた

徳島県神山町という、徳島駅からバスで1時間くらいの里山があります。海外や日本のクリエイターが一定期間滞在し作品を作る神山アーティストインレジデンスや、東京のIT企業が働く場としてサテライトオフィスを構えるなど。さまざまなメディアで先進的な取組みをする限界集落として取り上げられています。

ここで生きる人たちはどんな暮らしをしているのか、生の話を聞いてくることにしました。

どこにでもある里山

ぼくは茨城県の南側、片田舎に住んでいます。そういうわけか神山に到着したときに、想像以上にふつうで、どこにでもある里山だなと感じました。

と、思った矢先、道路を歩けば通りすぎるはずの車は止まって運転手のおじちゃんが話しかけてきたり、他人の家にさも我が家のように入ったり。 そこには、おじゃまするという概念はないありません。

その変わり、ある種家族のように食卓を囲みます。自分たちで夕食を作り、片付けて、あとは自宅に帰って寝るだけです。

コミュニケーションが発生する機会は、圧倒的に多い場所

上述したことからもわかるように、神山町の特徴はコミュニケーションが発生する機会が多いこと。この理由は単純ですが2つあります。

まずは町が狭いこと。次に、集まれる場所があることでしょう。 毎晩、若者を受け入れるNPO法人「グリーンバレー」の理事の自宅には若者が集い、神山に来るアーティストや移住者は古民家に複数人で一緒に住む。シェア古民家しているということです。

そうやって違うバックグラウンドを持った人たちが、寝食を共にすることでつながりが生まれ、創造性が育まれるのでしょう。

つながりが創造性を育む、と言えば、すこしの『文化系トークラジオLife』で「集積化」や「近接化」について語られているのですが、話のなかで地方や限界集落についても取り上げられています。

長くなりますが、内容をまとめるとこんな感じ。

「地方消滅と言われている時代になぜマイルドヤンキーが、いま来ているのか。里山資本主義というベストセラーがありましたが、それはそれでおかしいのではないか。

 

「地元回帰」として取り上げるのは間違いではないか。そうではなくて、「知っている人が近くにいる」という一極集中の話なのかもしれない。

 

すなわち、都市、半都市の問題ではなく、狭い場所の話。いま起こっている一極集中は、集積化が進んでいる中で人が近くにいることの価値がどんどん高めている。

 

事実、IT企業をはじめとした多くの企業がオフィスから5分以内の物件に住む社員には補助金だす。なぜならアイデアからしかビジネスが生まれない時代だから。GoogleやYahooは電子会議の時代、テレワークができると唄いながら本人たちは六本木の都心のど真ん中で仕事をしている。

 

一緒に仕事をする、つまり近接していないとアイデアが生まれないということである。したがって、地方も都市もみんなで集まって何かをすることが生んでいる価値の話。里山資本主義も、里山を作ることによって自活し、外から産業を呼びこむ話。ショッピングモールは、あまりにも拡散された地方に集積した場所を作るという思想。その他大学も都心回帰している。集積して価値を生む。」 

また、これは神山町の取組みを紹介した本『神山プロジェクト』でグリーンバレーの大南さんが語っていることとも共通していると思います。

「日本の地方は人口流出と高齢化にあえいでいる。全体の人口減少と都市化の波を考えれば、その中の多くは限界集落と化していくだろう。それを押しとどめるものがあるとすれば、それは道路でも美術館でもなく、クリエイティブな人間の集積以外にない。人が集まる場をつくる。それこそが、生き残りの解だ。」

そうであるならば、人が集まる場所に、人をつなげる人の役割が今後一層重要になってくると思えます。しかし今回神山町訪問では、立場の異なる地域のなかの人のつながりを強めていくべきだと感じたのも事実です。地域のなかにもそれぞれが生きる線(レイヤー)がやっぱりあり、主にこういう以下の立場の人間で固まる傾向があります。

  • 地元民
  • 移住者
  • なにかを神山でやろうと思って、一定期間滞在している人

これではバックグラウンドの異なる暮らしをする人たちが交わらないため、近くにいても、考え方や行動の仕方で摩擦は生じます。

さいごに

外から中への繋がりの仕組みの土台ができたいま、今度はもっと地域のなかで繋がる仕組みを整え、地域住民同士での意思や情報の共有に力を割いていくべきでしょう。

そういう意味で、今回、よそ者を様々な立場の神山の人につなげてくれた行政にもグリーンバレーにも属さず、地元民でも移住者でもない、どの色にも理解は示すがどんな色にも染まらない「絶妙な立ち位置のコーディネーター」の役割がますます重要になってくるのかもしれません。

今後も引き続き、神山町に注目していきたいと思います。 

神山プロジェクト

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